朱雀の、啼く

文学と、政治と。

おはよう、おやすみ

 夜勤明け。今朝は幾分過ごしやすい天気です。まだ早朝は肌寒かった。いつも夜が明けていくのを、道端にすわりこんで煙草を吸いながら眺めています。空の色調の移り変わりがうつくしい。そういえば子供の頃、海沿いの国道を走る自動車のなかから暮れてゆく海の上の空を眺めては、溜息をついていた。あんまりうつくしく、神々しく思えて。このあたりの風景に特筆すべき何かがある訳ではないとは思う。それでも何か琴線に触れるものがあった。せつなくて胸が一杯になった。いまはどうだろう。そういう感情に浸れるだけの心の余裕がないのかもしれない。あるいは心が疲弊しきっているみたいです。色々なことがあったからね。この十年の時間の濃密さよ。我ながら、よく生きているな、と思うよ。誰もそんなことで褒めてはくれないが。

 いろいろなことがあって、いろいろなことを無理に忘れようと努めて。けれど、そろそろ思い返していかなくてはならない潮時のようにも思う。未消化の課題がほんとうは山積みになっているんだ。迷惑をかけつづけている人々には済まない、と思う。が、もう少しだけ猶予をお願いしたい。

 窓の外から鳥の声が聞こえている。何の鳥だろう。近くの神社の境内の林に住んでいるのかしら。甘い蜜を吸うような鋭く、嬉しげな声。誰を呼んでいるのかと問えば、誰を呼んでいるのでもないが来る者はあるだろう、ただ声を発するのが快楽なのだと応えるのかも知れない、等と思いあたる。他に目的があるでなく、純粋に発された声が何者かを招いてしまうということ。自然の境地。そんな空想をする。ワタシハヒトヲコロシタノダガ・・・、あれは犀星だったろうか。記憶違いかも知れない。達治だったかしら。まあいい。あとで調べてみよう。

 煙草が切れてしまいそう。そうそう、吸っている銘柄も何度か変わったな、この十年で。いまは、ハイライト。くすんだブルーのパッケージが好きです。