断片 4

 殊更に、詩という、たかだかひとつの文芸ジャンルを祭り上げるつもりはない。だが、そこには、われわれの「心」の問題が依然として横たわっているのである。だから私はそれに拘泥する。いかなる発展もまたいかなる歴史的悲劇も、もしそれが人の「心」の問題に関わらないとしたら、それが何だというのだろう。個人の心、社会の心、世界史の心。われわれは何を目指し、どこへ向かっているのだろうか。われわれは、恣意によって何かを目指すことが可能なのだろうか。わたしはそうは思わない。われわれの目的にわれわれは抗うことができない、たとえそれが何であるかを見失った時代においてさえ。目的とはほんらいそういうものだ。おそらく、鮎川信夫のような人にとって、文明がふたたび世界的な破局を迎えるか否かという問題すら本質的問題の位置を担ってはいなかった。遥かに、本質的問題として、ひとの心の問題が座を占めていた。それは、同時に、詩の問題でもあったのだ。