「社会」主義と国家主義、個人主義

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・世界には多様な社会主義の世界観と理論、共通理念が存在する。社会主義の特徴は国家主義との対立において、また個人主義との対立において理解しうる。国家主義が、個人生活=人生の中で最高の価値を国家に認めるものであるならば、社会主義とはそれを社会に認め、個人主義とはそれを「個人」の中に認めるものである。諸々のイデオロギーはこれらの傾向を様々な程度、比率に於いて組み合わせたものであるという性格を有する。

イデオロギー(主義=主なる義)とは、論理的に明示された言語による理論体系が前提とし、その中で錬成される所の世界観的な思想傾向であり、思想のエレメント(ヘーゲル。ある思想がその中で生まれ、発展する思想環境)である。

・様々なる社会主義がどんな社会観=社会概念を前提=目的として、理念として有するかの判断が、「社会主義」諸思潮の区別の認識を可能にする。

・「社会」とは、国家の前提である。国家は社会から発生し、社会を支配する政治権力の機構である。社会主義は人間の普遍的結合=社会の名において、国家中心のイデオロギーである国家主義の様々な形態を批判する世界観=実践である。

・「右翼」乃至は「保守」と概括される所のイデオロギーは一般に国家主義をその世界観の基礎とする。多数の国家が分立する以上、国家主義国家主義、右翼と右翼は本来的には敵対的であるだけでなく、その本質において右翼保守思潮は「敵対的」な思想である。民族主義国家主義は共犯的に右翼保守思想の中で論理化されるが、これは国家が民族的な人間集団を主体として組織された歴史と帰一する。「民族」の実体はそれが血統主義の形態を取るときにも、遺伝子パターンのグループそのものではなく、いわば「民族」という観念であり、「血筋」という思想である。民族運動は社会運動の一形態である。

・「国家」と「社会」の区別は、その組織原理の区別である。「近代国家」を構成する諸個人の組織原理は国民としての権利義務であり、「近代的市民社会」の組織原理は労働乃至は経済的主体性である。だが普遍的共同体としての本来的「社会」の組織原理は「人間性=人であること」であり、このような普遍的意味での「社会」の疎外態として、近代は市民社会と国家の複合体としての共同体世界を生み出した。