自由民主党の立党宣言について

自由民主党自民党)は、以下の立党宣言を持つ。

 https://www.jimin.jp/s/aboutus/declaration/100289.html 

立党宣言 

昭和三十年十一月十五日

 政治は国民のもの、即ちその使命と任務は、内に民生を安定せしめ、公共の福祉を増進し、外に自主独立の権威を回復し、平和の諸条件を調整確立するにある。われらは、この使命と任務に鑑み、ここに民主政治の本義に立脚して、自由民主党を結成し、広く国民大衆とともにその責務を全うせんことを誓う。

 

この宣言は昭和30年つまり1955年に発表された。「政治は国民のもの」とあるのは正しい。但し、これは自民党が、対米従属と反共主義を二つの柱として結成された政党であるという反国民的本質を頭から覆い隠すための虚偽である。あるいは、対米従属と反共主義こそが国民のためになるという虚偽の正当化がこの立党宣言に現れている。自民党の反国民的性格は、アメリカ政府の対日政策の結果である。日本は太平洋戦争に於いて多数の犠牲を産んで、アメリカ軍を主体とする連合国(のちの国際連合の母体)に占領された。戦後、占領を経た日本の「独立」は財界をも含んでアメリカ政府の公式・非公式両面の指導下にあった。その基軸となる条約が日米安保条約、いわゆる日米軍事「同盟」(同盟の名を借りた従属の永久化)であったのである。

問題は自民党がそのような国民の利益に反する政党である事実を認めるかという点に、一つは存在する。この点に関しては、公開された過去のアメリカ政府の対日政策に関する文書を始め、多数の資料が存在し、対米従属論という一分野をなしているし、日米関係史からも、安保条約論からもアプローチが可能である。

 

 われら立党の政治理念は、第一に、ひたすら議会民主政治の大道を歩むにある。従ってわれらは、暴力と破壊、革命と独裁を政治手段とするすべての勢力又は思想をあくまで排撃する。第二に、個人の自由と人格の尊厳を社会秩序の基本的条件となす。故に、権力による専制と階級主義に反対する。
 われらは、秩序の中に前進をもとめ、知性を磨き、進歩的諸政策を敢行し、文化的民主国家の諸制度を確立して、祖国再建の大業に邁進せんとするものである。

「政治理念は」「大道を歩む」とあるが、実はこの文章は意味論的に誤っている。理念とは目的となる概念であるが、「議会民主政治」も「大道」も、目的ではなく手段である。手段を理念として、立党宣言に堂々と刻み込む錯誤にこそ、自民党の虚偽性が初めから明らかにされている。またこの手段の強調は(勿論、自民党にとって理念はいわゆる「建前」、国民向けの美しく善良なる仮面に過ぎないが)、自民党結党にあたっての自由党日本民主党の合同しうる一致点として、穏当な手段の共通性を合意したものとも見られる。

 自民党自身がこのような一見華美な立党宣言を発しながら、現実の為政はこの宣言にも国民の利益にも基本的に背反してきたという判断に基づき、私は自民党政治に根底から反対する。この宣言の通りに国会での議論採決が進められ国民の統治が行われてきたなら、我々は遥かに豊かで幸福な国で、まさに自由と民主主義の福利を享受できたであろう。しかし、対米従属主義と反共主義という自民党固有のイデオロギーの結果、日本の繁栄は極度の権利剥奪、過労死、弱者切り捨ての累々たる死骸の上に建てられた看板にしかならなかった。