2009-01-01から1年間の記事一覧

現代詩の卵について

とにかく、いい現代詩の作品をよみたい、という欲求に、いつの頃からか取り憑かれたようになっています。それも、戦後詩の歴史を刷新するような斬新な形式を備えたものを。これは実現不可能な欲求なのだろうか。文学史的な理解は、それは不可能だよとわたし…

変化について

* おおきな時代の変化のうちにある、とはどういうことだろう。ここ30年近く、この国は諸方面において相対的に安定した時代だったと云えると思いますが、変化の経験についての貧しさが、変化を敏感に察知することを困難にする傾向というのはありうるかも知…

忘却についてのつぶやき

* 現在は過去の様々な経緯のうえにあるのだが、後にくる世代は過去の経緯を、とりわけ近い過去の経緯を無視しがちな所があると思います。この現在が、先行世代の努力や経験の先に構成されているということです。未来への熱望から過去を閑却する身振りならば…

猶も、存在し続ける根拠

「現代詩手帖8月臨時増刊 吉本隆明」(1972、思潮社)に所収の幾つかのエセーを読む。当時の状況的な知識を充分に弁えていないので、その理解には自ずから限界が生じざるを得ないのですが、詩人としての吉本隆明の像をいくらかでも明瞭にすることができる一…

物語

* オイディプスの劇はさながらある人間の普遍性を示しているかのようです。だが、フロイトの説明は殊更に必要がない。虚心に読めば、そのことが得心されるはずである。盲目となることが市民的であることだ、という示唆がそこにはある。盲目となり、子供に手…

奇妙な光景

* 長い間にわたって躁的な光景が広がっていたが、最近の不況のニュースが人々をして我に帰らせているように見える。だとするならば不況のニュースも薬だろう。問題は、そのなかで苦しむ人々の救済に、社会の覚醒は精々の所ずっと遅れて手を差し伸べるに過ぎ…

読書遍歴

* わたしが文学作品に開眼させられたのは、小学生の時に入院先の病院のベッドのうえで読んだ夏目漱石の経験であったと思います。「坊ちゃん」。畳みかけるような文体に、子供ながら刺激的な読む楽しさを覚えていました。それから、中学生の時には、日本文学…

( 空虚について )

* わたしには思想状況について書くことはむつかしい。現在ある状況は思想状況として取り扱うことが非常に困難であるという認識があります。ゼロ年代というような概念があって、それはそれなりに正鵠を射ているのだと思います。しかし、それを分析する立場と…

意味について

意味について問うというともすれば古風な振る舞いをわたしは自分に禁ずることができない。色々な声が聴こえる。曰く、「意味などというものは幻想に過ぎない。そんなものは忘れてしまいなさい」「意味について問うとおかしくなるよ」「無意味こそが我々の出…

視座

信仰と生活、政治と宗教、芸術と信仰、芸術と政治、また、生活と政治、生活と芸術。こういう様々な組み合わせにおいてあたらしい視座を求めたい。それらは本来統合されていた何か、です。分化発展はある限界点に達しています。そこでそれらの間における関係…

共有すること、鮎川信夫

想像力は、たんに作家の制作上において問題になるものではありません。 読み、あるいは総じて受容する過程においてもやはり想像力が求められます。芸術作品の現象は、作品をめぐる様々な精神的な営みの交錯をなしています。そこにおいて、作品が受容者と出会…

鮎川信夫の詩とともに

この現在において、鮎川信夫の詩を読むということは、どういうことなのだろうかと、自問をする。 「戦後」という時代は終焉したものと云われて、もう長い年月が経っているが、それではこの、戦後詩の典型をなした詩群の価値は失われていると云えるでしょうか…

希望について

<希望は運命の如きものである。><人生は運命であるように、人生は希望である。運命的な存在である人間にとって生きていることは希望を持っていることである。> <決して失われることのないものが本来の希望である。><愛もまた運命ではないか。運命が必…

信仰、芸術、詩、実践

信仰とは何でしょう。それが、いまの私の課題の一つを成しているように感じます。わたしには、芸術も詩も、信仰においてはじめて、その意義に目覚めるというような予感があります。 それらは本来、一つのものであって、おなじ心の場所から来たるものではない…

吉本隆明 語る NHK教育 ETV特集

わたしが吉本隆明の作品に触れたのは、1996年の前後だったと思います。 「固有時との対話」「転位のための十篇」等に収められた詩篇を読んで、震撼をさせられました。現在でも、折にふれて読み返す詩人です。論客としてよりも、詩人としての吉本の印象が…

疑念と憧憬と

日本共産党の党員数が飛躍的に伸長しているという。 ほぼ四半世紀、いやそれ以上の期間にわたって見られなかった現象である。 赤旗を購読している私の許へも、日本共産党の町議会議員の方がみえられて、PR用のDVDを下さった。 この町では町議が毎日赤旗…