ヘーゲル論理学の体系」などの著作で武市が言うのは、ヘーゲルの論理構造の「一元の二元」という性格である。何の事かと思うかも知れないが、ヘーゲルは「宗教哲学」に纏められているが、基本的にキリスト教由来の一元論の論理学と世界観に立つ。神の国の論理と人の世の論理とをしかし区別して、一元論が二元論として現れるのが人の世だというのである。従って弁証法の原理は神の意志(御心)であって、それが俗世にあっては矛盾対立としてしか現れ得ない、と言っている。言い換えれば、絶対の相対である。