民主文学報告


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★延期になった今日の民主文学千葉支部定例会に提出予定だった報告。

民主文学2017年9月号
馬場雅史「廃坑のカナリアよ」
報告・渡部 唯人


作品の骨格

1 オッ君から山本に子供の誕生を報告する電話がかかってくる。
2 山本とオッ君との「家出」に関する経緯。
 −1 オッ君の家出。オッ君の悩み
 —2 山本がオッ君の家(おばさんの家)を訪問する。
 —3 山本とオッ君が清水沢へ家出する。
 —4 山本、オッ君、越前屋、北風の対話
3 オッ君が今後の決意を山本に伝えて電話を切る。



文学観・作品観

① 読者—読者の作品—作品—作者の作品—作者
② (主観)—(主観的作品)—(客観的作品1)
③ 客観的作品1—主観的作品1、主観的作品2、主観的作品3…
④ 複数の主観的作品相互の作用(コミュニケーション)から生まれる「客観的作品2」


・文芸作品の「読書」をどう考えるか。

・ 作品の主な印象 作品から個人が受け取る諸々の印象(心内に喚起された感情・情動)のうちで、主要なもの。「感動」「情感」「ポエジー」。読者の数だけありうる。
・ 主題=作品から導き出される一般的な意味=多くの人が受け取る「意味内容」。読者の数に限らす、一義であることを目指して確定される。
印象を喚起する命題。印象を言語化=論理化したもの。
・ 制作過程における、「作者の主題」「作者の動機」と、読者における内的・外的主題とは、異なるのが基本とする方法と、同一であるべきとする方法がある。—コミュニケーション論、他者論のタイプ。
・ 主題は、倫理的命題の形式を持つ。=作品は常に人間相互の関係活動(モノローグ的主題も複数の他者たちの中にある)における「感動」を表出するから。倫理とは人間の関係活動の論理であり、感動とは倫理的情動である。




本作に対する主な印象

・ オッ君の精神のたくましさに、熱い想いがこみ上げるのを感じた。


作品の主題

・生命の誕生はあらゆる人間の苦難や苦悩をも超越して精神を感動で満たし、感動は遠く離れた人と人とを結びつける。生命と感動とは価値高いものとして尊重されねばならない。

そのほか
・ タイトル、モチーフとなる「カナリア」のエピソードに既視感
(「廃坑」である点に特色)
・ 「感動」をめぐる構造=一種の芸術論としての作品。オッ君の、生命の誕生に接しての「感動」が、山本とのコミュニケーションの動機となる。その一連の経緯が、読者に感動を喚起する
・ オッ君の苦悩の叙述=苦悩への共感
・ 被差別者の連帯=「貝澤」姓とアイヌ
・ 北海道における朝鮮人の「強制労働」
・ 「苦悩」の論理的機能
・ 生命の誕生と責任の自覚=倫理的決断
・ オッ君の自己の存在に関す苦悩への一定の回答としての「子の誕生」。一生懸命生きていた証としての自己の生が、子供に引き継がれること。
・ 「寄り添う」ということ。ともに悩み、苦しみながら生きる。共苦。
・ 他者性、対話性=ポリフォニーと人物描写。
カナリアの啼き声としての、オッ君の電話。

不破哲三「革命論研究」より

・革命論研究の遅れースターリンの理論的介入に最大の原因
・レーニンの功績
・・古い唯物論の根本的な欠陥としての、革命的実践活動の無理解
階級闘争の戦術の諸問題
・レーニン時代の資料不足
スターリンによるレーニン主義の捏造「レーニン主義の基礎」
日本共産党の革命論研究
・綱領路線の確立ー第七回(1958)、第八回(1961)党大会
・武力による革命と、議会の多数を得ての革命
・革命以前の、多数者の支持の問題
・労働者階級のディクタトゥーラ
・レーニンの強力論と労働者階級の権力の本来の意味 
ソ連覇権主義による「マルクス・レーニン主義」 
ソ連崩壊20年、発達した資本主義国日本で、なぜ共産党は元気なのか?
・革命論に教科書はない
史的唯物論を都合よく歴史を裁断する型紙として扱うと、反対物に転化する
・革命論は出来上がった革命理論の体系ではない

共産党宣言と1848年の革命
・「革命原理の宣伝者」としてのナポレオン戦争エンゲルス
・「ナポレオンはドイツでは革命の代表者、革命の原理の宣伝者、古い封建社会の破壊者であった」 
・(ナポレオン法典は)あらゆる既存の法典よりも優れており、原則として平等を認める法典であった(エンゲルス、1845)
・革命的民主主義者から共産主義の革命家へ
・ライン新聞
マルクスエンゲルスには、哲学で革命的唯物論に進む過程が、同時に革命的民主主義から共産主義に移行する過程だった
・新聞の検閲との闘争
・社会経済と人民の生活の問題ー木材窃盗問題、ぶどう栽培農民と重税、青年ヘーゲル派との決別
共産主義思想の本来の危険は、理論的な論述にある(マルクス
不破哲三マルクスエンゲルス革命論研究」

・科学的な世界観の確立をめざす
ヘーゲル哲学との格闘
・独仏年誌(マルクス、ルーゲ)
・「法的諸関係並びに国家諸形態はー人間精神の一般的発展から理解されるべきものでもなくー物質的な生活諸関係に根差しているーヘーゲルは「市民社会」という名で総括しているーこ市民社会の解剖は、経済学のうちに求められなければならない」(マルクス
・経済学でなく、社会=政治思想の面でのマルクス
・政治的解放と人間的解放
市民社会の経済的不平等、経済的強者と経済的弱者
市民社会の内部構造の変革=人間的解放 
市民社会の抑圧を体現するプロレタリアートが人間的解放の担い手になる
・私的所有の否定の問題
・ドイツ解放の課題と道筋
・ドイツでは全般的解放=人間的解放を目指してこそ、部分的解放=政治的解放も可能
・「ドイツ人の解放は人間の解放である。この解放の頭脳は哲学であり、その心臓はプロレタリアートである」(ヘーゲル法哲学批判序説

史的唯物論ー1845-46の共同作業。
ブリュッセル共産主義通信委員会」。プルードン宛書簡。
「正義者同盟」。バブーフ主義。労働運動と理論運動の合体。
共産主義者同盟」に改称。共産党宣言の採択。

民主主義的変革と共産主義者
普通選挙権、選挙制度改革、民族独立。

チャーティズム運動へのマルクス発言。
労働者階級が選挙の財産資格の撤廃を目指す。
ブルジョワジーの政権と人民憲章。
議会多数の革命の路線の萌芽。

ドイツの民主主義革命。絶対君主制とドイツ革命運動。

民主主義の段階では民主主義者と共産主義者の共同が当然の方向になる。

共産主義者は自らも民主主義者として行動する。民主主義はプロレタリアートの政治的支配をもたらす。プロレタリアートの政治的支配があらゆる共産主義的施策の第一前提。
民主主義がまだ獲得されていない段階では、共産主義者と民主主義者は共同して戦う。